築40年時代の投資物件管理|漏水・排水管の詰まりを防ぐメンテナンスと修繕計画

投資物件の収益は、買ったときの価格や利回りだけでは決まりません。漏水や排水管の詰まりが一度起きると、修理費だけでなく、入居者への補償、家賃の減額、退去による空室まで重なります。しかも日本の建物はいま、大量に「中年期」を迎えています。一棟物件・区分マンションのオーナーが知っておきたい管理のポイントを、国土交通省などの公表資料をもとにまとめました。
この記事のポイント
- 建物の高齢化築40年以上の分譲マンションは2025年末で約158.8万戸。10年後に約2.0倍、20年後に約3.2倍の見込み
- 多いトラブル漏水(給水・給湯管、排水管、屋上・外壁)と排水管の詰まり。放置すると下の階や隣室に被害が広がる
- オーナーの責任貸主には修繕義務があり、使えない部分があれば家賃は減額。建物の欠陥で他人に損害を与えると賠償責任も
- 対策法定点検・定期巡回・排水管清掃を習慣にし、修繕周期に合わせて計画的に積み立てる
日本の住宅は「中年期」に入っている
国土交通省の推計では、分譲マンションのストックは2025年末で約723.6万戸。そのうち築40年以上は約158.8万戸で、10年後の2035年末には約313.1万戸、20年後の2045年末には約503.6万戸に増える見込みです。※1
| 時点 | 築40年以上の分譲マンション | 対象(築年) |
|---|---|---|
| 2015年末 | 約53.3万戸 | 1976年以前 |
| 2025年末(現在) | 約158.8万戸 | 1986年以前 |
| 2035年末(10年後) | 約313.1万戸(約2.0倍) | 1996年以前 |
| 2045年末(20年後) | 約503.6万戸(約3.2倍) | 2006年以前 |
また、総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高です。※2 建物が古くなる一方で部屋は余っている——入居者に選ばれ続けるかどうかは、管理の差で決まる時代になっています。
投資物件で多いトラブル
漏水
- 給水管・給湯管:古い鋼管の腐食やピンホール、継手のゆるみから水がにじみ出る
- 排水管:継手の劣化、詰まりによる逆流、洗濯機の排水ホースの外れ
- 建物の外まわり:屋上防水の劣化、外壁のひび割れ、サッシまわりのシーリング切れからの雨漏り
- 上の階から:浴室・洗濯機まわりの事故。被害は下の階の天井・壁・家財に広がる
排水管の詰まり
キッチンの油、浴室の髪の毛、トイレへの異物などが少しずつたまり、流れが悪くなります。共用の排水縦管が詰まると、低い階の部屋で逆流が起きることもあります。においや「ゴボゴボ」という音は、詰まりの前ぶれです。
一棟物件と区分マンションで違うこと
| 一棟アパート・マンション | 区分マンション(1室) | |
|---|---|---|
| 修繕の範囲 | 建物全体(屋上・外壁・共用配管・設備)がオーナーの責任 | 専有部分はオーナー、共用部分は管理組合 |
| 配管の扱い | すべてオーナーが計画・手配 | 専有部分の配管がどこまでかは管理規約で確認が必要 |
| 修繕の資金 | オーナー自身で積み立てる | 管理組合の修繕積立金+専有部分は自分で準備 |
オーナーが負う法律上の責任
「直すかどうかはオーナーが決めればいい」とは限りません。民法では次のように定められています。※3
- 修繕義務(民法第606条):貸主は、使用・収益に必要な修繕をする義務を負う(借主の責任で壊れた場合を除く)
- 家賃の減額(民法第611条):部屋の一部が使えなくなった場合、借主に責任がなければ、使えない割合に応じて家賃が減額される
- 借主による修繕(民法第607条の2):貸主に知らせても相当の期間内に直さない場合や急迫の事情がある場合は、借主が自分で修繕できる
- 工作物責任(民法第717条):建物の設置・保存に欠陥があり他人に損害を与えた場合、占有者が必要な注意をしていれば、所有者が責任を負う(過失がなくても)
漏水で下の階の家財を濡らした、外壁の落下物で通行人にけがをさせた——こうした場合の備えとして、建物の火災保険の補償内容や、施設の賠償責任に関する保険も確認しておきましょう。
修繕の目安(国土交通省のガイドラインから)
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」には、分譲マンション向けの修繕周期の例が示されています。一棟アパート・マンションの計画を立てるときにも参考になります。※4
| 部位・設備 | 補修・修繕 | 取替・全面改修 |
|---|---|---|
| 鉄部塗装(階段・手すり等) | 5〜7年 | — |
| 給水ポンプ・排水ポンプ | 5〜8年 | 14〜18年 |
| 屋上防水 | 12〜15年 | 24〜30年(撤去・新設) |
| 外壁塗装・シーリング | 12〜15年 | 24〜30年(除去・塗装) |
| 貯水槽 | 12〜16年 | 26〜30年 |
| 給水管・排水管 | 19〜23年(更生) | 30〜40年 |
| エレベーター | 12〜15年 | 26〜30年 |
| 長期修繕計画の見直し | 5年ごと | — |
築40年前後の建物は、給水管・排水管が2回目の大きな工事(取替)の時期に入ります。購入前に、修繕の履歴と今後の計画を必ず確認しましょう。
法令で決まっている主な点検
建物の規模や設備によって、法令で点検や報告が義務づけられているものがあります。※5
- 消防用設備等の点検(消防法第17条の3の3):消火器・自動火災報知設備などを定期に点検し、消防署へ報告(共同住宅は3年に1回の報告)
- 簡易専用水道の検査(水道法第34条の2):受水槽の有効容量が10㎥を超える建物は、年1回、登録検査機関の検査を受ける
- 建築物・昇降機等の定期報告(建築基準法第12条):一定の規模・用途の建物や、エレベーターなどは定期的な調査・検査と報告が必要
トラブルを防ぐ管理の5つの習慣
- 定期巡回:共用部、排水桝、屋上の排水口(ドレン)の落ち葉やごみを確認・清掃する
- 排水管の定期清掃:高圧洗浄を定期的に行い、詰まりと逆流を予防する
- 初動の体制:入居者からの連絡窓口を決め、止水・応急処置・写真記録までの手順を用意しておく
- 記録と計画:修繕の履歴を残し、修繕周期に合わせて費用を積み立てる
- 入退去時の点検:水まわり・配管・設備の状態を確認し、原状回復と一緒に小さな不具合を直す
海外にお住まいのオーナー様は、時差や言語のために現地の確認が遅れがちです。トラブルの初動を任せられる管理会社を決めておくことが、被害を小さくするいちばんの近道です。
よくある質問
区分マンションの漏水は、どこまでがオーナーの負担ですか?
原因の場所が専有部分か共用部分かで変わり、その境目は管理規約で決まります。まず管理会社(管理組合)に連絡し、原因箇所を調べてから負担を決めるのが一般的です。
入居者の使い方が原因の詰まりは、誰の負担ですか?
借主の故意・過失による損傷の修理費は、原則として借主の負担です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、借主の故意・過失による損耗は借主負担としています。※6
古い物件を買うときは、何を確認すればよいですか?
修繕の履歴(いつ・どこを直したか)、配管の材質と更新の有無、屋上防水・外壁の工事時期、法定点検の記録、区分マンションなら長期修繕計画と修繕積立金の額を確認しましょう。
修繕費は確定申告で経費にできますか?
維持・原状回復のための修繕費は、不動産所得の必要経費になるのが一般的です。ただし、建物の価値を高めたり使用期間を延ばしたりする工事は「資本的支出」として減価償却の対象になることがあります。判断は税理士にご確認ください。
海外に住んでいても管理を任せられますか?
MYHOUSING では、海外在住のオーナー様の物件を1室からお預かりし、修繕は見積りと写真でご報告、承認をいただいてから手配します。管理手数料は月額賃料(共益費を含む)の5.5%(税込)です。
物件の管理・修繕は MYHOUSING へ
MYHOUSING は東京・池袋の不動産会社です。入居者募集から家賃の集金、トラブルの初動、修繕の手配、毎月の明細まで、日本語・中文・English で対応します。リフォーム・原状回復・清掃も、提携会社の手配から完了確認までまとめてお任せいただけます。
出典(公的情報)
- ※1 国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」、同「分譲マンションストック数の推移」(いずれも2025年末現在、マンションに関する統計・データ等)
- ※2 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」(PDF)
- ※3 民法(e-Gov法令検索)第606条・第607条の2・第611条・第717条
- ※4 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン」(PDF)(マンション管理)
- ※5 消防法・水道法・建築基準法(e-Gov法令検索)
- ※6 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
※本記事は一般的な情報です。点検・報告の義務は建物の規模や設備、自治体によって異なります。具体的な修繕の時期や費用は、調査・診断の結果と専門家の意見で判断してください。(情報確認日:2026年11月2日)




